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Hachioji影絵プロジェクト

 東京造形大学大学院Hachioji影絵プロジェクトは、2007年度から始まった社会連携を目指す大学院のプロジェクト授業です。このプロジェクトでは、江戸時代に興った伝統芸能「写し絵(関西では錦影絵)」を研究対象としながら、さらに光と影を使った幅広い表現として「影絵」をとらえた活動を続けています。

 写し絵は、享和3年(1803年)に三笑亭都楽(のちに都屋都楽)が、上野で見た阿蘭陀エキマン鏡を自ら改良し、口上や鳴物を加えて神楽坂の茶屋で興行を始めたと言われています。その後、明治に入りさまざまな写し絵師がさかんに興行を行いますが、東京造形大学のある八王子では写し絵師の名人・玉川文蝶が登場し、その門下もあわせ明治期から昭和初期にかけて大衆娯楽、伝統芸能として盛んに実演されていました。まさに、八王子一帯は日本の中でも有数の影絵の町だったといえます。また、当時の八王子周辺では「写し絵」のことを「影絵」と称することが多く、この地域の呼称をプロジェクト名にしました。

 影絵は、映像表現の歴史においてアニメのルーツとも言われます。このプロジェクトでは八王子市郷土資料館に保存されていた「風呂(写し絵で使われる幻灯機)」を採寸し、復元しました。その実績をもとに、像が写る、動くという初源的な映像(幻灯)の不思議を体感し、伝統的な手法を使いながらも現代的な解釈を取り入れたオリジナル作品を制作、上演を主体に、多数のワークショップも開催しています。さらに、影絵を映像と音楽と身体表現の総合的な劇的パフォーマンスと位置づけ、造形大学が目指す各自の専門性を大切にしながらもさまざまな専門領域の横断性、総合性を研究しつつ、地域社会との現代的なアートコミュニケーションを実践しています。

今回(2018年)

テーマ:『狼森と雪女』

青梅市・雪女​・オオカミ・影絵

 『雪女』といえば雪国の話、というイメージが強いが、小泉八雲の『怪談』に出てくる『雪女』の舞台は少し意外だ。物語の冒頭に「武蔵国、西多摩郡調布村の百姓が私に語ってくれたものである」と記載されており、そこは現在の東京都青梅市の南部に該当するという。

​公演

担当:シナリオ 絵コンテ 種板 ワークショップの企画

絵コンテ

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​シナリオ

<原作>
むかし、年老いた茂作と18歳の巳之吉というふたりの木こりがいました。ある日、たいそう寒い晩に吹雪にあい、ふたりは川の渡し守の小屋に逃げ込みました。小屋は吹雪でゆれて、ミシミシと音がしています。
風の音に寝付けなかった巳之吉がうとうとし始めた頃、顔に雪がかかるので眼を覚ますと、小屋の雪明りのなかに白装束の女がいます。女は茂作の上に屈み、白い息をふきかけている。巳之吉の方へ女が振り向くと、その女は恐ろしい眼をしていたが、たいそう綺麗であった。
女が巳之吉に近づいてささやく「若くて、綺麗なあなたは殺めないでおきましょう。ただし、今夜見た事を誰かに話したら、そのときは必ずあなたを殺しますよ。」そう言うと、女の姿はすぐに消えました。
(間)
茂作は亡くなりましたが、巳之吉は一人できこりを続けました。
翌年、巳之吉は、お雪という美しい女性と出会いました。二人は、恋に落ち、子供も産まれ、幸せな生活をおくっていました。
ある晩、子供が寝静まった頃、行燈の光に照らされるお雪の、歳をとらない美しい横顔をながめながら、巳之吉は「そうしてあかりを受けているお前の横顔を見ていると、わしが十八の時遇った不思議な事を思い出すよ」巳之吉は、渡し守の小屋での出来事を話した。「実際、あれは夢だったのか、雪女であったか、わしにはわからないんじゃ‥」
突然お雪は縫い物を投げ捨て、叫びました。「それは、私です。そのことを話したら、あなたを殺すといったじゃないですか。子供がいなければ殺してしまうものを‥」彼女の叫びは風の音と合わさり、姿は輝いた白い霞となって消えてしまった。

<暗転>

#1 町の遠景 プロローグ
時間が経ったことを表すシーン
スクリーン全面に空から見たような古い町並み。
小さな機関車がゆっくりと町を通り過ぎる。(機関車は大きくなってスクリーン下に消える)

#2 村の中 状況説明
<朗読>あれから時は経ち、巳之吉の娘の雪子は美しい女性になりました。
父親の巳之吉はすでに数年前に亡くなってしまい、雪子はいまではひとりぼっちです。
あの日の出来事から、巳之吉は雪女の話を他人に二度と話しませんでした。

<朗読>村の子供たちと山の神社へ遊びに行く途中、子供たちはみんな元気よく走り回っています。

< 暗転 >

#3 山の神社 オオカミの怒り
<朗読>この日はいい天気でした。森の中では動物たちが、まるで歌を歌っているように楽しげです。子供達はどんどん山の奥に進んで行って、山奥の神社にまで来ました。

雪子:ここはオオカミ様を祀っている神社です。静かにしてくださいね。そうしないと、オオカミ様の祟りにあいますよ。
子供:オオカミ様なんていないよ!そんなの古い伝説だよ!

<朗読>なんと、子供たちは神社のお供え物を食べたり、神社にいたずら書きをしたりしています。
< 間 >
<朗読>すべてのことをオオカミさまは見ていました。やがて、オオカミ様は目を覚ますと、突然、空が暗くなり、強い風も吹き始め、稲妻がなりはじめました。

(スクリーン自体をゆする?)
<激しい音楽>
雪子と子供たちは雷が鳴る中あわてて逃げる
ここは音楽と影絵だけのシーン。恐ろしいオオカミ神が飛び回るが、中にはまぬけなオオカミもいる。ワークショップで制作してもらったオオカミもここで出てくる。怖いオオカミの絵はスクリーンを抜けて観客席にまで動き回る。

#4 村 村長の配慮
<朗読>村の中も混乱していました。雪子と子供たちは村長のもとに逃げ込みました。村長は子供たちの怖がった様子を見て、ゆっくりと話し出しました。
みんな、落ち着きなさい。これはオオカミ様の怒りに触れたということです。(雪子に)雪子、新しい供え物を準備しなさい。一緒に神社に行くことにしよう。

#5 山の神社 オオカミの声
<朗読>村長は神官と巫女を集め、新しい御供えを持って神社に行きました。儀式を行う途中で、雪子は不思議な声を聞きます。

オオカミ:「雪子、雪子。わしの声が聞こえるか?
わしはこの神社のオオカミじゃ。雪子、お前が来るのをずっと待っていた。そのわけはそのうちお前もわかるじゃろう。」
<暗転>

<朗読>やがて、オオカミ様の怒りがおさまったのか、雨も止み、晴れ間が見えてきました。
祭りのシーン(花火2発目で音が終了)
<暗転>

#6 森 オオカミの声
<朗読>あの日から雪子の頭の中ではずっと耳鳴りのような声が聞こえます。自分の中で何かが変わってしまったように感じるのです。耳鳴りの声はどこかで聞き覚えのある声です。意識を集中させて聞いていると、どうやら声は「森へ来なさい」と言っているようです。雪子はそれが何かを確かめようと、一人で森に出かけました。

# 6-2 森 夜の狼森
幻想的なシーン。森に迷い込んだ雪子。狼森はとても怖いところという設定。いろんな動物がたくさん出てくる。自然の恐怖=雪女のテーマ
公演ポスターの絵のような世界
最終的に滝に出る。(結界)

#7 滝 雪女登場
象徴的に雪女が現れる
あたりは激しい吹雪だが、どこかやさしい
<朗読>雪子にははっきりと雪女が自分の本当のお母さんだとわかりました。(セリフ変更の可能性あり)

#8 滝 母との出会い
雪子:お母さん!
時空を超えた二人の出会いは降りしきる吹雪の中、森につつまれた青梅の自然とひとつになっていくのでした。

クレジット

END

ワークショップ

上演前、オオカミのオリジナル種板を創り体験ワークショップが行われた。

全ての演目上演後、風呂と種板を使っての映写体験ワークショップが行われた。子供たちの笑顧が弾 け、大人の参加者は無心に質間をしていた。

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